コスメプロセスプランナーが紹介する化粧品のつくり方

化粧品(コスメ)を作りたい!!を応援するための情報発信をします

成功のカギ:化粧品OEMの初回商談での商談術(前編)

本日は、見積もりの裏事情です。(パート1)

※書いている途中にボリュームが大きくなりましたので

 2回に分けて記事にすることにします。

 

本記事では私の新人営業時代の悪い例を参考に挙げてどこが悪かったのか?どうすればよいのか?

 

本記事の内容はOEM営業の特に新人に役立つ記事ですが、実は化粧品を作ろうとする人にとっても参考になる内容になっています。

 

本ブログは以下の内容で構成しています。

  • 【こんな商談・見積もりはダメ!】
  • 【初回商談ではコレを聴け!】
    • 【なぜオリジナル化粧品? なぜその商品?】
    • 【いくら出せる?】
    • 【1年で何個売れる?】

 

・こんな商談・見積もり作成はダメ

・初回商談ではコレを聴け!

 「なぜオリジナル商品?ナゼその商品?」

 「いくら出せる?」

 「1年で何個売れる?」

 「いくらで売れると思う?」 

 「いつから売る?」 →ここからは、パート2で紹介

 「最後に聞くこと・伝えること」

・まとめ

 

 

【こんな商談・見積もりはダメ!】

 

私が新人の時に、化粧品を作りたいというサロンオーナーさんへ依頼内容を聞きに行って、見積もりを作り、評価をいただくまでの流れです。

 

アウトバスのヘアトリートメントを作りたいということで、はじめから商材が決まっているヘアサロンオーナーさんの問い合わを頂きました。

 

そこで、私は見積もりを作成するために必要な情報を収集すべく、下記の内容の聞き取りをして、オーナーさんの意向を聞き取りました。

 

アウトバスのヘアトリートメントですが・・・

Q:使用感はどんな感じをご希望ですか?

A:シリコーンが配合されていない乳液タイプが良い。乳液タイプだけど、髪の毛がまとまりすぎず、サラサラした仕上がりになるようにしてほしい。

 

Q:成分のこだわりや入れてほしい成分はありますか?

A:毛髪を補修する成分をたくさん入れて欲しい。

 

Q:香りはどうしますか?

A:好きな香水があるから、その香水に近づけて欲しい。

 

Q:容量は何ミリリットルにしますか?

A:100mlくらい。

 

Q:容器はどんな容器に入れますか?

A:片手で使いたいから、ポンプ容器て欲しい

 

Q:商品は箱に入れますか?

A:お店で目立つようにきらびやかな箱に入れたい

 

Q:全部で何個作りますか?

A:できるだけ少なくして欲しい。在庫を持ちたくないから

 

Q:いつまでに欲しいですか?

A:なるべく早く作りたい。

 

以上のような事を聞き取り、会社に持ち帰りました。

早速、中身の値段を知るために中身の値段を調べます。研究所にいって、内容を伝え試作にかかってもらいます。それまで、価格はお預けです。

その間に容器の価格について調査です。

容器手配部門に、オーナーさんの希望のポンプ容器を依頼します。

同時に箱の依頼もします。

製造部門と物流部門にも問い合わせて、製造コスト、商品の検査コスト、物流コストを算出してもらいます。

後日、出揃ったそれぞれのコストを合算して

商品見積もりの完成です。

 

早速、出来上がったサンプルをオーナーさんに試してもらいました。

中身はこだわりの処方で作ったため、オーナーさんにはとても満足していただきました。

 

ですが、見積もりを見せた瞬間にコレまでの上機嫌だったオーナーさんが急に意気消沈していきます。

想像していたよりもコストが高く、更に生産数量(ロット)の多かったためです。

 

「らむねさん、こんなに高いの? しかも最小ロットで5,000個も?こんなに売りさばくことできないよ。」

「もう一回、見積もりし直してくれる?」

 

そして、もう一度関係部署におねがいして、2回目の試作品と見積もりをオーナーさんに持参します。

 

価格には納得していただけましたが、どこか不満げなオーナーさん。製品化をしてくれることにはなりましたが、はじめのイメージとは大きく変わってしまった初のオリジナル化粧品は少し残念な感じ担ってしまったことにガッカリしてしまったようです。

 

さらに、この後納品までのスケジュールが長いということでトラブルになったり、納品先が店舗であったことで、置き場所の問題や運び込み時のトラブルなど、色々なトラブルが発生してしまいました。 これらのトラブルは、また別の機会に記事にすることとしでこの場では割愛します。

 

結局、色々あった成果それっきりリピートもなく、新商品企画という話もありませんでした。

 

さて、何が悪かったのでしょうか?

当時の私は「オーナーさんの意向の通りに見積もりしたのに、なぜ見積もり修正となったのだろう?なぜあまり喜んでもらえなかったのだろう?」と思っていました。

 

それでは次で、どうすれば良かったのかを紹介します。

 

【初回商談ではコレを聴け!】

見積もり依頼を受けた際には、その商材のコンセプトや希望の使用感などを聴くことは当たり前なのですが、それよりも先にまずやることがあります。

 

【なぜオリジナル化粧品? なぜその商品?】

最初の質問は「なぜオリジナル化粧品を作りたいのか? なぜその商品を作ろうと決めたのか?」です。

 

 

すでにオーナーさんは、商品まで決めているのにどうしてそんなことを改めて聴くのでしょうか?

 

実はこの質問で、本当にオリジナル商品である必要があるのか?一度決めた商材だが、途中で他の商品に目移りしないのか?本当に売り切る気持ちがあるか?を見極めることができます。

一方でオーナーさんにとっても、この質問を受けることで、オリジナル商品を作ろうと思った動機を思い返し、改めて意識を固める作業にもなります。

 

例えば、サロンオーナーさんの売り上げの主力が人による施術である場合は、物販などで別に収入源を確保したいと思うことがあります。

ですが、物販であればオリジナルでなくてもサロン用化粧品メーカーがサロン向けに開発し販売している商品もあります。

これらは卸販売ができますので、製品完成までのリードタイムや開発コスト、在庫の心配などがほとんどありません。

また、商材に関しても、シャンプーやコンディショナーでなくてよかったか?スキンケアやハンドケア・目元まわりサービスも提供している店舗であればそれらのサービスに付随する商品じゃなくて大丈夫か?

他の店舗と競合にならないような商品にするか?あえて競合にぶつけていくか?

などを冷静に考え直す必要があります。

 

Q:アウトバスタイプのヘアトリートメントをたくりたいということですが、今回オリジナルで作ろうと思ったきっかけはどうしてですか?

A:そうですね。やっぱり施術って人が動いて売り上げを作るんですが、やっぱり1日の稼働時間って限られるから、施術以外でも売上が出来ればと思ってね。どうせ物品販売をするならよりお客さんとの関係を深められるには、オリジナルの方がイイかなって思ったんだよ。

 

Q:なぜ、オリジナルの方がお客さんとのお客さんとの距離が縮まると思ったんですか?

 

A:だって、自分でプロデュースした商品だったらやっぱり説明してても楽しいだろうし、何よりイイものを使って欲しいしね。その結果、「あそこのサロンで買える商品をまた使いたい」と思ってもらいたいからかなぁ。

 

Q:それでは、アウトバスのヘアトリートメントにしようと思われたのはなぜですか?

 

A:そうだね、正直うちの店舗はヘアケア以外にもスキンケアやネイルケアのサービスもやってるんだけど、やっぱり髪に関することの方が私も強みだと思っているし、、、あと、うちのサロンってカラーリングに関しての口コミでイイ評価をもらってることが多いんだよね。

だから、カラーした髪をケアできるものがイイかなぁとおもって、シャンプーやトリートメントはお店や通販でもたくさんの商品があるしね。

 

ここまで聞き取りができれば、OKです。

動機を聞くことで、オリジナル商品である理由もヘアトリートメントである必要も、オーナーさんの口から聞くことができました。

そして、実はこの会話のなかでオーナーさんも自分の考えを説明することで作りたい動機や商材の選定基準を改めて整理できているのです。

 

【いくら出せる?】

続いての質問は「いくら出せますか?」です。

ぶっきらぼうな言い方で単刀直入すぎましたね。

では、他の言い方に変えます。

「予算はいくらですか?」もしくは、「今回のオリジナル化粧品にいくらコストをかけられますか?」です。

コストは一商品あたりではなく、オリジナル商品をつくり販売するという今回のプロジェクトにいくらお金をかけられるか?ということです。

ざっくり金額でOKですので、使える予算額を決めてもらってください。

金額が出たらその内訳について考えます。

 

この予算の中は商品の販促費、物流費(運賃や倉庫費用)等も含んだ金額です。

 

例えば200万円が予算として確保できるのであれば、200万円の中で化粧品の製造費用、物流費用、販促費用、その他費用を捻出するわけですから、製造費用は200万円かかってはいけないということがわかります。

 

【製造費用】

OEMメーカーから仕入れる費用です。オーナーさんの指定する倉庫または店舗までの運送費用まで含んでいるかどうかは確認して下さい。

また、製品を作る際に発生する研究開発費用や、容器や箱の代金以外に別途発生する初期費用(印刷版代・刃型代など)もこの製造費用に含みます。

 

【物流費用】

OEMメーカーからの運賃(製造費用に含まれている場合があります)とは別に、倉庫を借りて商品を保管する場合は倉庫費用が発生します。商品を倉庫に入れるときに発生する「入庫料」、商品を保管する期間に対して発生する「保管料」、商品を倉庫から出すときに発生する「出庫料」その他「伝票作成費用」などの項目でのコストが発生する場合もあります。

なお、生産数がすくない場合は十数ケースですべての製品を梱包できてしまう場合もあるため、事業所の事務所は店舗のバックヤードで保管する場合もあります。その場合は物流費用はほぼゼロになります。

 

【販促費用】

大手の化粧品メーカーやはブレスメーカー(企画会社)などは、テレビや雑誌、公共交通機関の中吊り広告・ウェブ上の広告などに加え、紙媒体の販促チラシや店頭什器などの相当額の広告費用がかけることが多くありますが、サロン等の店舗販売の場合であれば市場の特性上それほどのコストは掛ける必要がないかもしれません。

 

※今回は、ヘアサロンオーナーさんの店舗での販売を、例にしていますので、販促費用の割合は少なく設定できるでしょうし、物流費用も事務所やバックヤードでの保管を考えるとほとんどかからないと想定できます。

 

【1年で何個売れる?】

続いての質問が【1年で何個売れそうですか?】です。

この質問を即答できる人はまずいません。

ですから、予測をするお手伝いをしてあげましょう。

 

続きを読む

化粧品の製造プロセス(化粧品生産の舞台裏)

 

化粧品の製造工程を大きく分けると 

 バルクの製造→容器への充填→製品仕上げ

の順番で進みます。

 

 

【バルクの製造】

まずは「バルク」という聞き慣れない言葉ですが、バルクとは化粧品の中身のことを指します。

 

 

業界が違えば別の意味を持つ言葉であり、例えばアパレルでは「量産」の意味であったり、物流業界ではバラ者を「バルク品」などと言うそうです。

 

 

化粧品業界では、容器の中に詰められる中身のことを「バルク」と呼びます。そして中身を製造することを「バルク製造」と言ったりします。

 

化粧品(商品)を作るときに、はじめにする作業が「バルク製造」です。

 

それではバルク製造の裏側に付いて説明しましょう。

 

 

 

原材料の秤量

「秤量」とは、はかり を使って原材料の重さをはかることです。

 

市販されている化粧水などは「100ml」と「ml(ミリリットル)」のように体積で記載されているものもありますが、バルク製造の際は基本的に重さで原材料を測って生産します。

 

どんなはかりを使っているのかといいますと「台ばかり」や「上皿ばかり(うわざらばかり)」などを使用しています。

最近の製造工場ではほとんどがデジタルで重量が表示される”はかり”がほとんどです。

 

通常はキログラム単位の”はかり”を使用しますが、はかる量が少ない場合は、小数点以下 数桁のグラム単位まではかる事ができる”はかり”を使用する場合もあります。

 

色々な原料をはかりますが、これらは「処方(しょほう)」と呼ばれる原料名と必要量が表になっている資料をもとに、必要な原材料をはかっていきます。処方は「レシピ」と呼ばれる場合もあります。

   

調合

「調合」は秤量した原材料を混ぜ合わせ、加熱したり冷却したりすることでバルクを作ることです。

 

調合は化粧品製造のノウハウをたくさん使用する工程です。

 

<<調合のノウハウの一例>>

”一気に水に投入すると原材料が十分に水に溶解せず、やり直しになってしまう”

ということがあります。そのため

”水をよく混ぜている状態で、ゆっくりと原材料を混合したりしなければならない”

のようなノウハウがいたるところであります。

 

このノウハウは企業によってバラバラではあると思いますが、「製造工程表」といったり、「製造指図書(せいぞうさしずしょ)」や「フローチャート」といった資料で管理され、製造に携わる人が毎回同じようにバルク製造ができるように工夫されています。

 

調合するときの容器は「混合釜」もしくは「製造釜」とよばれる大きな容器で作られます。

 

「釜」と呼ぶだけあって、大きなものがほとんどですが、製造するバルクの量によっては、数キログラムのバケツサイズほどの製造釜もあります。

 

化粧品は化粧水のように水に有用成分を溶かし込んだバルクもあれば、水と油を混合して「乳化(にゅうか)」したような「乳液(にゅうえき)」や「クリーム」などもあります。

このように乳化が必要なバルクを製造するための乳化釜という製造釜もあります。

 

化粧品のバルク製造は複雑なようですが、簡単に説明するとお菓子作りの様々な工程を大スケールで行っているものと思っていただいたら結構です。

 

 

貯蔵・検査

調合が終わってバルクは一旦貯蔵されます。調合直後に容器詰めされる場合もありますが、一旦は貯蔵容器に入れられる場合がほとんどです。バルク貯蔵はドラム缶やコンテナーと言われる数百キロ〜約1トン程度の容器に入れて保管されます。10トンを超える大きな貯蔵タンクもあります。

 

貯蔵する理由は様々ですが、ほとんどの理由として挙げられるのがバルクの検査です。 

 

製造後のバルクは処方どおりにできたかをチェックする必要があります。

このチェック作業は次に同じバルクを調合するときのためのデータベースになる意味もあります。

 

バルクのpH(酸性やアルカリ性という性質)、粘性(ねばりけ、とろみのような性質)、色、香り、使った感覚(使用感)などや、バルクの中に微生物が混入していないか(菌検査)を行います。

 

この検査に合格するまでは時間がかかり、長い場合はは数日〜1週間かかる場合もあります。

 

検査の間に調合完了したバルクで製造釜が占有されると、次のバルク製造ができませんので一旦貯蔵して検査結果を待ちます。

 

ここまででバルクの製造は完了です。バルク製造の流れをまとめると次の流れです。

1:原材料の秤量

2:調合

3:貯蔵・検査

 

 

【容器への充填】

バルク製造後の検査が終わると、容器へバルクを入れます。これを「充填(じゅうてん)」といいます。

 

化粧水をボトルに充填する場合を例に充填工程を説明します。

 

バルク(化粧水)を容器に充填します。次に「中栓(なかせん)」をつけます。最後に、キャップを締めます。

 

バルクがちゃんと規定量入っているかどうかをチェックするために、重さを測ります。

これで容器への充填は終わりです。



化粧品の容器はとてもたくさんの種類があります。バルクの粘性やバルクの出し方、使い方などによって使用する容器もさまざまな形状があります。

 

クリームであればジャー容器やチューブ容器に充填したりシャンプーやコンディショナーならポンプ容器や詰め替え品用のパウチ袋などに充填し、パウダーファンデーションなら、「金皿(かなざら)」という金属製の浅い皿のような容器に充填します。

 

バルクの種類もたくさんあり、さらに容器の種類もたくさんあります、そのため充填や重さの計量などの工程は前後したりします。

 

容器に充填されてキャップ等をしたもので、製品の仕上げを待っている状態の商品を「半製品」といいます。

 

【製品仕上げ】

 

製品仕上げは、容器にバルクを充填した後の工程です。

 

この工程は、製品の包装つかう材料や方法により仕上げ作業の内容が変わるためとても複雑な工程です。

 

複雑な工程であるため、化粧品の生産において最もコストがかかる部分とも言えます。

 

容器に充填された半製品は、「化粧箱」に入れられたり、「シュリンクフィルム(透明な保護フィルム)」で包装されたり、「ポップラベル(アテンションシール)」が貼られたりして仕上げられます。

 

製品1個が完成したら、段ボール箱に入れられます。段ボール箱は「外装(がいそう)」、「カートンケース」、「外箱(そとばこ)」などと呼ばれます。

 

数個程度の少ない単位で小さな箱に一度梱包し、外箱に入れる場合もあります。このときの小さな箱を「内箱(うちばこ)」や「中箱(なかばこ)」、「中装(ちゅうそう)」と言ったりします。

 

先ほど、半製品それぞれを包装する箱を「化粧箱」と言いましたが、それ以外に「個箱(こばこ)」や「個装(こそう)」とも呼ばれます。

 

<<商品仕上げの一例>>

・半製品→化粧箱+能書(添付の説明書など)→封印シール(バージンシール)→内箱→外箱

 

・半製品→シュリンクフィルム→ポップラベル→外箱



製品仕上げが完了するとやっと出荷できる状態になりますが、最後に出荷前の検査があります。

 

完成した製品でも、充填や製品仕上げの工程のどこかで異物混入や微生物汚染、仕上がりの違いなどが発生しているかもしれませんので、最終工程まで完了した商品からランダムに抜き取りして、微生物検査や外観チェックを行います。

 

最終検査に合格がでたら、晴れて出荷が可能となります。

 

バルク製造のから商品が仕上がり、出荷可能になるまでは1週間から2週間かかる場合もあります。バルク製造の複雑さや仕上げ工程の複雑さなどにより、さらに日にちがかかる場合もあります。

 

【化粧品製造プロセスのまとめ】

バルク製造 (原材料の秤量→調合→検査・調合)

充填への充填

製品仕上げ

というプロセスを経て化粧品は作らていることを説明しました。

今回の説明では、代表的な化粧品(化粧水など)の製造プロセスを説明しましたが、固形石けんや粉状の化粧品、エアゾールスプレーの化粧品などは一概にこのプロセスでは説明できない部分もあります。ジャンルの異なる化粧品の製造プロセスにはおいおい触れていこうと思います。