コスメプロセスプランナーが紹介する化粧品のつくり方

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化粧品の製造プロセス(化粧品生産の舞台裏)

 

化粧品の製造工程を大きく分けると 

 バルクの製造→容器への充填→製品仕上げ

の順番で進みます。

 

 

【バルクの製造】

まずは「バルク」という聞き慣れない言葉ですが、バルクとは化粧品の中身のことを指します。

 

 

業界が違えば別の意味を持つ言葉であり、例えばアパレルでは「量産」の意味であったり、物流業界ではバラ者を「バルク品」などと言うそうです。

 

 

化粧品業界では、容器の中に詰められる中身のことを「バルク」と呼びます。そして中身を製造することを「バルク製造」と言ったりします。

 

化粧品(商品)を作るときに、はじめにする作業が「バルク製造」です。

 

それではバルク製造の裏側に付いて説明しましょう。

 

 

 

原材料の秤量

「秤量」とは、はかり を使って原材料の重さをはかることです。

 

市販されている化粧水などは「100ml」と「ml(ミリリットル)」のように体積で記載されているものもありますが、バルク製造の際は基本的に重さで原材料を測って生産します。

 

どんなはかりを使っているのかといいますと「台ばかり」や「上皿ばかり(うわざらばかり)」などを使用しています。

最近の製造工場ではほとんどがデジタルで重量が表示される”はかり”がほとんどです。

 

通常はキログラム単位の”はかり”を使用しますが、はかる量が少ない場合は、小数点以下 数桁のグラム単位まではかる事ができる”はかり”を使用する場合もあります。

 

色々な原料をはかりますが、これらは「処方(しょほう)」と呼ばれる原料名と必要量が表になっている資料をもとに、必要な原材料をはかっていきます。処方は「レシピ」と呼ばれる場合もあります。

   

調合

「調合」は秤量した原材料を混ぜ合わせ、加熱したり冷却したりすることでバルクを作ることです。

 

調合は化粧品製造のノウハウをたくさん使用する工程です。

 

<<調合のノウハウの一例>>

”一気に水に投入すると原材料が十分に水に溶解せず、やり直しになってしまう”

ということがあります。そのため

”水をよく混ぜている状態で、ゆっくりと原材料を混合したりしなければならない”

のようなノウハウがいたるところであります。

 

このノウハウは企業によってバラバラではあると思いますが、「製造工程表」といったり、「製造指図書(せいぞうさしずしょ)」や「フローチャート」といった資料で管理され、製造に携わる人が毎回同じようにバルク製造ができるように工夫されています。

 

調合するときの容器は「混合釜」もしくは「製造釜」とよばれる大きな容器で作られます。

 

「釜」と呼ぶだけあって、大きなものがほとんどですが、製造するバルクの量によっては、数キログラムのバケツサイズほどの製造釜もあります。

 

化粧品は化粧水のように水に有用成分を溶かし込んだバルクもあれば、水と油を混合して「乳化(にゅうか)」したような「乳液(にゅうえき)」や「クリーム」などもあります。

このように乳化が必要なバルクを製造するための乳化釜という製造釜もあります。

 

化粧品のバルク製造は複雑なようですが、簡単に説明するとお菓子作りの様々な工程を大スケールで行っているものと思っていただいたら結構です。

 

 

貯蔵・検査

調合が終わってバルクは一旦貯蔵されます。調合直後に容器詰めされる場合もありますが、一旦は貯蔵容器に入れられる場合がほとんどです。バルク貯蔵はドラム缶やコンテナーと言われる数百キロ〜約1トン程度の容器に入れて保管されます。10トンを超える大きな貯蔵タンクもあります。

 

貯蔵する理由は様々ですが、ほとんどの理由として挙げられるのがバルクの検査です。 

 

製造後のバルクは処方どおりにできたかをチェックする必要があります。

このチェック作業は次に同じバルクを調合するときのためのデータベースになる意味もあります。

 

バルクのpH(酸性やアルカリ性という性質)、粘性(ねばりけ、とろみのような性質)、色、香り、使った感覚(使用感)などや、バルクの中に微生物が混入していないか(菌検査)を行います。

 

この検査に合格するまでは時間がかかり、長い場合はは数日〜1週間かかる場合もあります。

 

検査の間に調合完了したバルクで製造釜が占有されると、次のバルク製造ができませんので一旦貯蔵して検査結果を待ちます。

 

ここまででバルクの製造は完了です。バルク製造の流れをまとめると次の流れです。

1:原材料の秤量

2:調合

3:貯蔵・検査

 

 

【容器への充填】

バルク製造後の検査が終わると、容器へバルクを入れます。これを「充填(じゅうてん)」といいます。

 

化粧水をボトルに充填する場合を例に充填工程を説明します。

 

バルク(化粧水)を容器に充填します。次に「中栓(なかせん)」をつけます。最後に、キャップを締めます。

 

バルクがちゃんと規定量入っているかどうかをチェックするために、重さを測ります。

これで容器への充填は終わりです。



化粧品の容器はとてもたくさんの種類があります。バルクの粘性やバルクの出し方、使い方などによって使用する容器もさまざまな形状があります。

 

クリームであればジャー容器やチューブ容器に充填したりシャンプーやコンディショナーならポンプ容器や詰め替え品用のパウチ袋などに充填し、パウダーファンデーションなら、「金皿(かなざら)」という金属製の浅い皿のような容器に充填します。

 

バルクの種類もたくさんあり、さらに容器の種類もたくさんあります、そのため充填や重さの計量などの工程は前後したりします。

 

容器に充填されてキャップ等をしたもので、製品の仕上げを待っている状態の商品を「半製品」といいます。

 

【製品仕上げ】

 

製品仕上げは、容器にバルクを充填した後の工程です。

 

この工程は、製品の包装つかう材料や方法により仕上げ作業の内容が変わるためとても複雑な工程です。

 

複雑な工程であるため、化粧品の生産において最もコストがかかる部分とも言えます。

 

容器に充填された半製品は、「化粧箱」に入れられたり、「シュリンクフィルム(透明な保護フィルム)」で包装されたり、「ポップラベル(アテンションシール)」が貼られたりして仕上げられます。

 

製品1個が完成したら、段ボール箱に入れられます。段ボール箱は「外装(がいそう)」、「カートンケース」、「外箱(そとばこ)」などと呼ばれます。

 

数個程度の少ない単位で小さな箱に一度梱包し、外箱に入れる場合もあります。このときの小さな箱を「内箱(うちばこ)」や「中箱(なかばこ)」、「中装(ちゅうそう)」と言ったりします。

 

先ほど、半製品それぞれを包装する箱を「化粧箱」と言いましたが、それ以外に「個箱(こばこ)」や「個装(こそう)」とも呼ばれます。

 

<<商品仕上げの一例>>

・半製品→化粧箱+能書(添付の説明書など)→封印シール(バージンシール)→内箱→外箱

 

・半製品→シュリンクフィルム→ポップラベル→外箱



製品仕上げが完了するとやっと出荷できる状態になりますが、最後に出荷前の検査があります。

 

完成した製品でも、充填や製品仕上げの工程のどこかで異物混入や微生物汚染、仕上がりの違いなどが発生しているかもしれませんので、最終工程まで完了した商品からランダムに抜き取りして、微生物検査や外観チェックを行います。

 

最終検査に合格がでたら、晴れて出荷が可能となります。

 

バルク製造のから商品が仕上がり、出荷可能になるまでは1週間から2週間かかる場合もあります。バルク製造の複雑さや仕上げ工程の複雑さなどにより、さらに日にちがかかる場合もあります。

 

【化粧品製造プロセスのまとめ】

バルク製造 (原材料の秤量→調合→検査・調合)

充填への充填

製品仕上げ

というプロセスを経て化粧品は作らていることを説明しました。

今回の説明では、代表的な化粧品(化粧水など)の製造プロセスを説明しましたが、固形石けんや粉状の化粧品、エアゾールスプレーの化粧品などは一概にこのプロセスでは説明できない部分もあります。ジャンルの異なる化粧品の製造プロセスにはおいおい触れていこうと思います。