今回は、「成功のカギ:化粧品OEMの初回商談での商談術」の続編(パート2)になります。
前回は下記の内容を記事にしましたので、ぜひパート1から読んでみてください。
今回は続きになります。
になります。
「いくらで売れると思いますか?」に続いての質問です。
【いつから売る?】
続いての質問は「いつから販売しますか?」です。
だいたいの人は出来るだけ早くと答えるかもしれませんが、化粧品を中身の開発から始めると1〜2ヶ月程度では収まりません。最初の商談から少なくとも6ヶ月以上はかかると思ったほうが良いです。
なぜそんなに時間がかかってしまうのでしょうか?
化粧品をOEMで生産を依頼する際に最も時間が掛かる工程は「経時安定性の確認」です。経時安定性の確認とは、化粧品が過酷な保管条件に置かれても、最低3年間は安定した品質を保つことが出来る事を確認することです。
化粧品の製造メーカーでは3年間品質が安定しているかどうかを加速試験という方法によって調べます。加速試験は、試作品を高温条件において長時間保管することで、3年後の品質状態を予測する試験で、3年後の状態を予測するには3ヶ月〜6ヶ月の期間が必要になりまっす。そのため、商品化するまでに時間がかかってしまうのです。
特に香りをつけるために配合する香料は、品質安定性に大きく影響を与えることが多く、同じ処方であっても香料の種類が違うだけで、長時間保管後の品質状態が変わってしまうことがあるため、しっかりと経時安定性の確認を行う必要があります。
中身の安定性以外にも、容器生産のリードタイムも関係します。受注生産タイプの化粧品容器を使用する場合は、化粧品容器が完成するまでに数ヶ月必要になる場合がありますが、追加の別工程で容器に印刷などの装飾を施す場合は別途で作業が必要になるために更にリードタイムが必要となります。
以上、多くの確認事項や調達のためのリードタイムの影響により化粧品の仕様が決まってもすぐに生産・納品ができない場合が多くあります。
例えば、
オーナーさんが「1ヶ月後に開催されるイベントで自社オリジナル化粧品を発表したい。」
という思いがあったとしても上記の理由から間に合わないケースがあるので、発売時期は余裕を持った設定が必要となります。
【最後に聞く事・伝えること】
最後に聞くのがお客さまの「こだわり」になります。
中身の使用感や配合したい特徴成分、容器の装飾、箱の装飾などになります。
「こだわり」が化粧品を作りたいという意欲に直結していることはずなのに、なぜ最後に聴くの?と疑問に思われたかもしれません。
それは、前述の質問とそれに対する回答をオーナーさんが自分の中で巡らせてきた結果、「こだわりの変化」が起こるからです。
具体的には不必要なこだわりが削ぎ落とされた状態になります。
つまり、前述の質問に対する答えをオーナーさんの中でも考えたおかけで、商品を投入しようとしているマーケットの規模を把握し、競合品などの相場、自分の店舗でのサービスとの連携を考えたうえで年間で何個うれるか?を考えた結果、「どのこだわりが最も大事なのか?」という重み付けができたからです。
オーナーさんは、実際に販売している風景やお客様との会話までもイメージできているかもしれません。
だから、こだわりは最後に聴く方が良いのです。
とはいえ、こだわりはこだわりです。
この段階にあっても、あれやこれやと幾つかのこだわりが出てくると思います。そのときは「こだわりに優先順位をつけてください。」とお願いします。
この優先順位をつける行為は、営業さんが見積もりを作成し、日を改めて試作品や見積もりを評価するタイミングで大きく役立ちます。
そして次の伝えるべきことをつたえて商談をクロージングします。
「(オーナーさんの)予算・年間売上数量(つまり発注数量)、それから発売希望時期を踏まえて、(オーナーさんの)こだわりをできる限り盛り込んだ、最適な見積もりと試作品を用意します。」と言って終わりです。
このセリフを持って、安心感を与えることが出来るはずです。
【見積もりの作成】
営業さんは会社に戻ったら、聞き取りした内容をまとめ、試作検討の依頼や各種試算の依頼を各部署にお願いすることになります。
【聞き取りした内容例】
・商材:アウトバスヘアトリートメントオイル
・生産にかけられる予算:約150万円
・数量:1,000個
・こだわり:中身のこだわり、容器のこだわり
中身を開発する処方開発部門や容器・包装材料等の副資材を手配する部門・製造部門などに依頼する前に大まかな試算は自分で行います。
生産にかけられる予算:150万円 から
容器や箱を印刷する際に発生する「版代」、化粧箱の作成するときに必要な「トムソン刃型作成代」などの初期費用を引くと・・・
130万円程度の予算で1,000個の化粧品を作らなくてはなりません。
つまり、1個あたり1,300円になります。
1,300円のうちメーカー利益が仮に30%とすると、910円の原価でメーカーは原料・生産工賃・容器費用等を賄わなければなりません。
ここから更にそれぞれのコストを仮に設定していきます。
容器コスト:300円
生産コスト:150円
副資材(箱など)コスト:150円
と設定すると 910円 ー 300円 ー 150円 ー 150円 = 310円
中身原料にかけられるコストは310円になります。
今回のヘアオイルの容量を100mLと設定した場合は、中身の1キロあたりの原価は3,100円となります。(化粧品の原料コストは一般的に1キロあたりの費用で考えることが多くあります)
ここまで計算できれば、開発部門に「3,100円/kg以下で、オーナーさんの中身へのこだわりをできるだけ盛り込んだ試作品を作って」と依頼することができます。
副資材や容器についても、上記のように試算したコストに合う仕様で見積もりを作れば良いのです。
ここまでの流れに沿って作られた見積もりは、「オーナーさん予算枠内で1年間で販売できる数量を想定したうえで、こだわりを最大限盛り込んだ見積もり」になっています。
こうして、出来上がった見積もりと試作品をオーナーさんのもとへ持ち込こみます。このとき忘れては行けないのが、初回商談時の聞き取りした内容です。 見積もりを提示する前に、どのこだわりが今回の試作品と見積もりに盛り込むことができたかをしっかり伝えます。そして、商材選択の根拠、生産数量決定の根拠等を一度おさらいをした後に見積もりを提出し評価してもらいます。
こうすることで、オーナーさんの意向をできるだけ盛り込んで、必要最低限の生産量で予算内に収まる最善の見積もりを作ってきたことがアピール出来るのです。
もちろん、この後の修正は格段に減ります。
【まとめ】
さて、2回の記事に分かれて、ダメな商談の例をあげ、これに対してどのように商談を進めるべきだったかを説明しました。
「なぜオリジナルの化粧品なのか?」で、既製品の卸売販売ではない理由を明確にし、「なぜその商材なのか?」で、その商材にした動機を思い返します。つづいて「いくら出せるか?」と予算をうかがい、「1年で何個うれるか?」で商品をさばくことが出来る量を予測してもらいました。
つづいてパート2で「いつから発売するか?」で発売のスケジュールを認識していただきました。そして最後に聞くのがこだわりです。こだわりを最後に聞く質問の流れを取ることで、オーナーさんの作りたい化粧品の解像度を上げることができ、見積もりのパターンを必要な条件のみに絞ることができる。ということを説明してきました。
それぞれの質問は多少前後しても構わないとおもいますが、オリジナルの化粧品を作りたいと思う人やそれを聞き取る営業の人は、こだわりから話をするのではなく、質問の答えをまずは用意することを始めてください。