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化粧品の裏事情:化粧品には効果がない!?

 

今回は「化粧品は効果がない!?」というタイトルで記事を書いてみました。

 

実は読者の気を惹きたくて強めのタイトルにしたのですが、あながち間違いでもないので是非読んでみてください。

 



ニキビは化粧品(医薬部外品)で治らない

 

市場で、特にインターネット上やアプリ広告などでよく見かける「ニキビケアが治る」とか「シミが消える」だとかいう広告を見たことはありませんか?

 

あまりにも行き過ぎた広告なので、胡散臭さ抜群ですね。このような広告を本気にする人は多くないと思います。(それでも広告に興味を持つ人がゼロではないだろうことも想像できます。)

 

ですが、行き過ぎた広告にダマされない自信がある人でも、医薬部外品であったり、ニキビケア成分の配合された化粧品であれば、ニキビが良くなったりすると思っていませんか?

 

ソレ、間違いです。



化粧品・医薬部外品・医薬品の違い

 

「ニキビを改善することが出来る=治癒する」ということですが、このような治癒するような表現は医薬品にしか認められていません。そのため、医薬部外品や化粧品でニキビが改善するような広告をすることはできないのです。

 

医薬品:厚生労働省の配合されている有効成分の効果が認められているもの。

     「治癒」的な効果があるもの。

 

医薬部外品:医薬品同様に厚生労働省より有効成分の効果が認められたもの。

      「防止」的な効果があるもの

 

化粧品:医薬部外品よりも効果が緩和であり、人体への影響がすくないもの。

 

簡単に医薬品・医薬部外品・化粧品を説明すると上記のとおりです。

また、化粧品については薬機法で下記のように明記されています。

 

化粧品は「人の身体を清潔にし、美化し、魅力を増し、容貌を変え、又は皮膚もしくは毛髪を健やかに保つために、身体に塗擦、散布その他これらに類似する方法で使用されることが目的とされている物で、人体に対する作用が緩和なものをいう。」

 

そうです。「人体に対する作用が緩和なもの」なのです。

ということは、ニキビが治ったり、シミがなくなったり、毛髪が生えたり、毛穴が小さくなったりしては行けず、極論的に言うと化粧品には効果があってはいけないのです。

 

「効果があってはいけない」はあまりにも極端な表現だったかもしれません・・・。

 

 

化粧品の効能効果の範囲

 

広告で化粧品の効能効果を言う事を「標榜(ひょうぼう)」といいますが、化粧品で標榜できる効能効果56項目しかありません。

 

※56項目を上げると長くなるので、記事の末尾に記載します。

 

化粧品で標榜可能な56項目は、そっくりこのまま使用しなければならないというわけではなく、本質的な意味が56項目から逸脱してはいけないということです。

 

そして、この項目には「毛髪が生える」とか「ニキビが治る」などという記載はありません。(18番目に「(洗浄により)ニキビ、あせもを防ぐ」とありますので、洗顔でニキビを防ぐと標榜することは問題ありません)

 

例えば化粧水に関してでいうと、基本的には保湿効果によってお肌のコンディションを整える事のみが標榜可能ということになります。



攻めた広告のからくり

化粧品が標榜できる効能効果では、「シミが消えた」とか「ニキビが治った」といえず、薬機法違反になることはわかりました。

 

でも、普段から良く見るアプリ広告やネット広告などでは、「消えた」「治った」と言っているような気がしませんか? なぜ違反ではないのか? と思いませんか?

 

実は、よくよく広告を観察すると、「シミが消えた」「ニキビが治った」という表現は明確にはしていないのです。

 

化粧品の広告では、文字にして「シミ」「ニキビ」などと記載すると、『その商品はシミやニキビに、なんらかの効果があると認識される広告』となり、違反であると指摘を受ける可能性があります。

 

そこで、実際は「コンディションの良くない肌」などと記載してニキビやシミがある肌の「写真」や「イメージ図」を掲載します。そして、別のきれいな肌の写真やイメージ図を掲載し「健全な肌」などと説明記載します。

 

そうすると、明確に「ニキビ」や「シミ」と書かずして、更には「消える」や「治る」とも書いていないのに、画像だけでニキビ・シミが治ったように消費者サイドが解釈してしまうのです。

 

制作者サイドの言い訳では、「2つの写真は肌の悪い状態と、良い状態をただ説明しているだけ」となります。

 

※この手法も誤認されるおそれがありますし、制作側の悪意を感じるのでNG表現であると私は思います。



このように、広告を見る側は、すごく効く商品と捉えがちな広告であっても、じっくり分析してみると巧みに違反行為をしないように考えられたものがたくさんあります。




ホントは効いてる化粧品!

 

ここに来て、これまで話と真逆の見出しをつけているので

「おい!?」

と突っ込みたくなる人もいるでしょうが、落ち着いてください。

 

皆さんは化粧品を使って肌の状態が良くなったりしたことなどの経験が少なからずあると思います。場合によっては、シミが薄くなったり、ニキビが改善されたりなどの変化を感じたことがある人もいると思います。

 

先程は、化粧品は効果があってはいけないと言いましたが、化粧品で認められた効能効果以外を標榜はしてはいけないのであって、効果が絶対ないというわけでもありません。(もちろん顕著に変化があってはいけませんが)

 

化粧品の原材料や処方を研究開発する現場では、お肌への効果を細胞レベルで検証したり、すぐれた機能性がある化粧品を作り出そうと日々技術革新の努力がなされており、その発展は目まぐるしいものです。

 

化粧品に関わる企業が集まる展示会などでは、素晴らしい機能性がある原材料や優れた効果が期待できる技術が発表されており、これらの機能性原材料や美容成分は、肌のバリア機能を高めたり、傷の治癒速度が速くなる事実をメーカーの実施する実験検証結果にに基づいたエヴィデンスを根拠に公開されます。

 

このような優れた技術が駆使されたり、美容成分が配合された化粧品は世の中にたくさんありますが、化粧品で認められている効能効果の範囲を超えて標榜することができないというところが悔しいところです。

 

気をつけてほしいこと

 

もし、化粧品メーカーなどにオリジナル化粧品の製造を依頼するとします。

化粧品メーカーによっては、提案書や企画書を作成して成分の特徴や期待する効果などを詳しく説明をしてくれる場合があるかもしれません。

 

この時、提案書の化粧品は色々な効果や性能があることが記載されているかもしれません。ですが、商品化する時の広告のコピーには使えない表現が書かれている可能性があるということに注意してください。

 

化粧品の処方開発に従事する人は原材料や処方技術のプロフェッショナルではあっても広告や薬機法や景品表示法に関しては明るくない場合があります。もし、企画書作成の段階で広告に使える表現かどうかのチェックがなされていない場合は、化粧品の機能性を説明した技術資料であり、広告表現は別途相談が必要であるとお言う事を覚えておいてください。

 

ほとんどの化粧品OEMメーカーでは、営業部門や開発部門は広告表現のプロフェッショナルではない可能性があります。この場合、広告表現などは別の部門が担当しチェックします。法務部門や薬事部門などと呼ばれます。

 

そして、薬事部門によるチェック機能が発動するのはもっぱら製品化が決定した後です。そのため、企画書を見て商品の売りにしようと思っていたキャッチコピーが、あとになって使えない表現だったということはよくある話なのです。

 

このような問題を避けるために、企画書には「広告表現に使えるものではありません」とか「薬機法に基づいたチェックを受ける必要があります」などと但し書きがあります。

 

この点は、これから化粧品を製造依頼する側も、メーカーで働き製造を担う側も十分に理解し注意する必要があるでしょう。

 

 

資料 <化粧品で標榜できる効能効果>

 

頭皮・毛髪

 (1)頭皮、毛髪を清浄にする。

 (2)香りにより毛髪、頭皮の不快臭を抑える。

 (3)頭皮、毛髪をすこやかに保つ。

 (4)毛髪にはり、こしを与える。

 (5)頭皮、毛髪にうるおいを与える。

 (6)頭皮、毛髪のうるおいを保つ。

 (7)毛髪をしなやかにする。

 (8)クシどおりをよくする。

 (9)毛髪のつやを保つ。

 (10)毛髪につやを与える。

 (11)フケ、カユミがとれる。

 (12)フケ、カユミを抑える。

 (13)毛髪の水分、油分を補い保つ。

 (14)裂毛、切毛、枝毛を防ぐ。

 (15)髪型を整え、保持する。

 (16)毛髪の帯電を防止する。

 

皮膚

 (17)(汚れをおとすことにより)皮膚を清浄にする。

 (18)(洗浄により)ニキビ、アセモを防ぐ(洗顔料)。

 (19)肌を整える。

 (20)肌のキメを整える。

 (21)皮膚をすこやかに保つ。

 (22)肌荒れを防ぐ。

 (23)肌をひきしめる。

 (24)皮膚にうるおいを与える。

 (25)皮膚の水分、油分を補い保つ。

 (26)皮膚の柔軟性を保つ。

 (27)皮膚を保護する。

 (28)皮膚の乾燥を防ぐ。

 (29)肌を柔らげる。

 (30)肌にはりを与える。

 (31)肌にツヤを与える。

 (32)肌を滑らかにする。

 (33)ひげを剃りやすくする。

 (34)ひがそり後の肌を整える。

 (35)あせもを防ぐ(打粉)。

 (36)日やけを防ぐ。

 (37)日やけによるシミ、ソバカスを防ぐ。

 

香り

 (38)芳香を与える。

 

 (39)爪を保護する。

 (40)爪をすこやかに保つ。

 (41)爪にうるおいを与える。

 

 (42)口唇の荒れを防ぐ。

 (43)口唇のキメを整える。

 (44)口唇にうるおいを与える。

 (45)口唇をすこやかにする。

 (46)口唇を保護する。口唇の乾燥を防ぐ。

 (47)口唇の乾燥によるカサツキを防ぐ。

 (48)口唇を滑らかにする。

 

口腔

 (49)ムシ歯を防ぐ(使用時にブラッシングを行う歯みがき類)。

 (50)歯を白くする(使用時にブラッシングを行う歯みがき類)。

 (51)歯垢を除去する(使用時にブラッシングを行う歯みがき類)。

 (52)口中を浄化する(歯みがき類)。

 (53)口臭を防ぐ(歯みがき類)。

 (54)歯のやにを取る(使用時にブラッシングを行う歯みがき類)。

 (55)歯石の沈着を防ぐ(使用時にブラッシングを行う歯みがき類)。

 

その他(皮膚)

 (56)乾燥による小ジワを目立たなくする。

 

注意事項

 注1)例えば、「補い保つ」は「補う」あるいは「保つ」との効能でも可とする。

 注2)「皮膚」と「肌」の使い分けは可とする。

 注3)( )内は、効能には含めないが、使用形態から考慮して、限定するものである。

 

 

本ブログでは、化粧品製造についての裏事情を発信してます。

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